【2331日目】書評『なぜ「地雷専門店」は成功したのか?」(デッドボール総監督&ハラ・ショー:東邦出版)

地雷専門店「鶯谷デッドボール」の創業物語。

現場の状況を知るための資料としては非常に貴重な一冊ですが・・・個人的には完全にアウトですね。

もちろん、デッドボールさんの営業趣旨も、そこで働く女性の背景も分かりますし、アサヒ芸能をはじめ、メディアがもてはやす理由も分かるのですが、これは100%ダメですよ。中途半端に風俗に理解がある人ほど、地雷専門店肯定派に回りますが、ダメなものはきちんとダメだと言わないと。

まず、大前提として、風俗が売っているのはあくまで「サービス」であって、そこで働く女性に対する「差別」や「偏見」、「言葉の暴力」を売り買いする場ではない。

年齢や容姿、性格の問題で、「サービス」を売ることができなくなった=売れるものが何もなくなった女性が、最後に残された「人間としての尊厳」を売る=自身に対して「ブス・デブ・ババア」といった差別や偏見の言葉や眼差しを投げつける権利を客に対して売るのが「地雷専門店」の立ち位置だと思います。差別と偏見と言葉の暴力の商品化。

もちろん、経営者や女性は「ネタでやっているんだよ」と言うでしょうし、男性客も「罰ゲームのネタで使うんだよ」と思いますが、飲食店で例えれば「賞味期限切れの食材を出す店」であって、店と客の間で合意があろうがなかろうが、社会的にも法律的にも完全にアウト。

「営業ノルマを達成できなかった社員の罰ゲーム用に、賞味期限切れのメニューを用意しております!」という飲食店と全く同じ。やるなら店舗ではなく個人間でやれ、という話ですよね。テレビでお笑い芸人をいじるのとは、文脈が全く違う。

そして、こうした地雷専門店が成り立つ背景には、「女性」かつ「性風俗」だから、という「二重の差別」がありますよね。

例えば、一般のマッサージ屋さんが、社会的に排除された男性を集めて、「チビ・デブ・中年童貞の地雷男専門店」と銘打って営業をしても、絶対に経営は成り立たない。

つまり、女性に対する差別は金になるが、男性に対する差別は金にならないんですよ。そして、性風俗の世界では、そこで働く女性に対する差別が空気のようなデフォルトになっているので、社会問題にすらならない。この「二重の差別」があるからこそ、地雷専門店が成り立つ。

また男性客側も、怖いもの見たさの「ホラーハウス型消費」、及びどんな相手が来るか分からない当たりハズレのドキドキ感を味わうための「ガチャガチャ型消費」をモチベーションにして訪れる人が多い、とのことですが、この「ホラーハウス型消費」と「ガチャガチャ型消費」、いずれも風俗の遊び方としては最悪の部類です。

遊園地のお化け屋敷やゲームの世界ならともかく、相手はヴァーチャルではない「生身の人間」なんですから。

繰り返しますが、風俗は「サービス」を買う場所であって、お化け屋敷でもギャンブルでもない。

まとめると、地雷専門店は、「そもそも売るべきでないものを、売るべきでない相手に売っている」点で、風俗店としては完全にアウトだと思います。

そして一番の問題は、地雷専門店そのものではなく、こういった地雷専門店が生み出される社会的・法律的な土壌にある。

警察が取り締まれるのは本番行為と未成年使用くらいであって、地雷専門店のように、どう考えても社会的にアウトな営業をしているような店舗、人妻生即尺店のように、どう考えても衛生的にアウトなサービスを商品化している店舗に対しては、法律的には何も言えないし、言わない。保健所も行政も同様。最近話題のJK産業より、質的にも数的にもよっぽど問題だと思いますが、誰も何も言わない。


デッドボールさん、個人的に「良心的」だと思うのが、在籍女性の「国籍」や「障害や病気の有無」を全面に出していないところです。どう考えても福祉の対象になるような女性が、国籍や障害の有無を問わず数多く在籍されていると思うのですが、あくまで、本人の年齢と容姿、性格や経歴のみを「差別」の対象にしている。

もし女性の「国籍」や「障害」を差別の対象にしてしまうと、社会的にも法律的にも、完全に言い逃れができない状態になる、と分かっておられるのでしょう(もちろん、個人的には今でも完全にアウトだと思いますが)。

デッドボールさんはまだ「良心的」ですが、地雷ネタがメディアに飽きられば、あるいは模倣店が増えれば、さらに過激さを求めて、「国籍」や「障害」を差別の対象にしたヘイトスピーチばりの店舗が出てくるのは、火を見るより明らかですよね。

そうしたことの予防のためにも、地雷専門店に対しては、きちんと「アウト」と言うべき。「社会的に排除された女性たちに、雇用の場を創出している」と言うのは単なる詭弁です。社会的に排除された女性の支援は福祉の仕事であって、風俗がそれを肩代わりする必要も義務もない。むしろ福祉との接続の妨げになる場合もある。

地雷専門店的な店舗が増えれば、性風俗産業全体が、誰にとっても良くない方向に向かうのは明白。アサヒ芸能をはじめ、メディア関係者の皆さん、将来的にどうなるか責任が取れないものを、「面白いから」という理由だけで近視眼的に煽るのはやめましょう。
 
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一般社団法人ホワイトハンズ 
 
代表理事 坂爪真吾(さかつめ・しんご)
 
私たちは、「新しい性の公共」をつくります。
 
新刊『男子の貞操』(ちくま新書)、4月9日発売!

★ホワイトハンズ:2014〜2015年のイベント予定

 
11月16日(日) 「障がい者の性」基礎研修@京都

11月29日(土)「障がい者の性」基礎研修@渋谷

11月30日(日) セックスワーク・サミット2014@大阪

 

コメント
「地雷専門店」そのものを「差別的」と断じるのはいささか飛躍が過ぎるものと考えます。鶯谷デッドボールのコンセプトが画期的であったのは、「容姿、品性、年齢」について、事実をごまかすことなく、むしろクローズアップして紹介したことにあるのだ、と思っています。そのことが「差別」であるとは思えません。ある「サービス」にPros&Cons、価格、を明示し、意思能力のある顧客に販売する、これは全く公正な商行為だと思います。
ネガティブな表現を糊塗し、耳障りの良い表現に修正したところで、結局顧客はもとより、働く女性にとっても利するものは無いのではないでしょうか。
ところで、私には坂爪様が好んで用いられる「社会」「社会化」「社会的」という言葉が好きではありません。使い勝手が良い言葉ではありますが、いずれも対象を曖昧にし、文章の価値を毀損していると思います。ここは坂爪様のブログなのですから、坂爪様の視点で、説得力を持つ文章をお書きなれば良いと思います。「社会」を依り代にする必要はありません。
末筆ながら、乱文失礼いたしました。
  • 違和感
  • 2015/04/20 11:13 PM
賞味期限の切れた食材と、容姿の悪い女性は同じなのですか?
では、容姿が良くなくてはこういった仕事はしてはならないのでしょうか。
容姿が良くない人でも何とか写真を修正したり褒め称える宣伝文句で偽るのが通常の風俗店ですが、その点で雇い主や女性達が開き直って堂々としはじめたらそれが「差別」なのですか…?
「女性が皆渋々働かされていて、意地悪で悪口を書かれている」と思っておられるのではないですか?もしそうでなければどうかをお考えください。
自分の価値観が必ずしも正しいとは限りません。
無闇に「差別」と発することこそ失礼です。
私は直接こちらのお店に関係している人間ではありませんが、残念な気持ちになりました。
  • 通りすがりのサービス業
  • 2015/04/23 5:28 AM
ん〜ちょっと違うんじゃないかと…
歳をとっていても太ってても歯がなくても、女性として賞味期限が切れてる訳じゃないでしょ!?
坂爪さんの言ってる事のほうが私には差別発言に感じられますが…
  • 茨城のデリ屋
  • 2015/04/25 12:58 AM
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