【1886日目】週刊ポスト「売春と風俗」特集に見る、セックスワーク論の「高齢化」問題


今週号の週刊ポスト「売春と風俗」特集、記事内には載っておりませんが、ホワイトハンズも、微力ながら取材協力いたしました。売春から風俗に至るまでの歴史的な部分がガッチリ書かれているので、ご興味のある方はご一読ください。

特集の内容に関して、個人的に、セックスワーク論の「高齢化」問題を改めて感じたので、備忘録的に書きます。

今回の特集で、小谷野敦さん(50代・比較文学者)、上野千鶴子さん(60代・社会学者)、井上章一さん(50代・風俗史家)らがコメントを寄せておられますが、いずれも、私が学生だった時代〜それ以前(10〜20年前)から、この問題に関して論じておられる方々ばかりです。

つまり、セックスワーク論に関しては、もう長い間、前述の方々に匹敵、あるいは凌駕するような、若手の研究者や論者がほとんど出てきていないという、著しい「高齢化」状況(失礼)にあると思います。

その理由は、以下の2つだと考えます。

1つ目は、「議論自体に生産性が無い」から。

今回の特集をご覧いただければお分かりの通り、セックスワーク1.0(売春)の世界、2.0(性風俗)の世界では、セクシュアル・リテラシーの欠如に加え、政治の問題、差別の問題、歴史の問題、思想の問題、人権の問題がごっちゃになっているので、議論自体が、そもそもまともに成立しない。

議論のベースになるほぼ唯一の視点が、ダメ出しの武器としては最強だが、ポジ出しがほとんどできないフェミニズム的な視点(上野さん)しかなく、それに対するアンチの視点(小谷野さん)も、フェミニズムへの怨念?が込められた、非当事者視点からの俗流合法化論レベルの域を出ない、という、非常にお粗末な世界。

結果、議論自体が単なる是非論、感情論レベルで終わってしまい、代替案も出せなければ、実効性のある政策提言も、何もできない。「なくせ」と叫ぶだけか、「必要悪だ」と叫ぶだけ。

こういった状況が何十年も続いているので、客観的に見れば、端的に、セックスワークの議論には、若手研究者や論者にとって、参入する魅力も、意義も、何も無い。

要は、「人が育たない」「そもそも、育て役となる人がいない」世界。後進の育成に、完全に失敗してしまった世界、と言えると思います。


2つ目は、「当事者が発言しない(できない)」から。


今回の特集も、コメントを寄せている論者全員が、セックスワークの非当事者(学者、行政書士、ライター、風俗評論家等)で、当事者の発言はゼロ。

セックスワーク1.0(売春)の世界、2.0(性風俗)の世界における大きな問題が、「当事者が発言しない(したくてもできない)」ことにあると思います。

当事者であるとカミングアウトすること自体が、大きな社会的リスクになったり、場合によっては、属している店舗やエリア、業界全体にマイナスの影響を及ぼしかねないので、他の当事者や業界関係者、そして自分自身のことを真面目に考えれば考えるほど、メディアには出てこれず、発言もできない。

結果、セックスワーク論は、当事者不在の、非当事者の・非当事者による・非当事者のための代弁合戦に終始することになり、さらに議論の生産性が無くなる。そして、ますます新規や若手が集まらなくなる・・という悪循環。


こうした理由があって、セックスワーク論の世界は、「非当事者の中高年が、自己の信条やルサンチマンに基づいて、代弁合戦をやっている」という、極めて不毛な世界になっている、と。


この「セックスワーク論の高齢化」問題、あまり、というか、ほとんど論じられることがありませんが、冷静に考えると、かなり致命的な問題だと思います。

さらに、論者側だけでなく、「当事者の高齢化」問題もあります。

現時点で、セックスワークの問題系に関わっておられる当事者の方、おそらく、ほぼ全員が、90年代後半〜00年代前半の「店舗型の世界」を体験した人(年齢で言えば、20代後半〜40代前半)だと思うんですよね。

当事者・男性客・経営者にとって、店舗型の世界=ある種の「理想郷」が潰されて、無店舗型の世界=「砂漠」になった結果、様々な問題が噴出&アングラ化したわけですが、店舗型の世界を知っている人は、「理想郷」を知っているがゆえに、「このままじゃダメだ!」「もう一度、あの時のような世界を作らなくては」「この世界で働くみんなを守らなくては!」と、社会に対して、積極的にアクションを起こす動機付けが、それなりに湧く。

しかし、はじめから無店舗型の世界=「砂漠」しか知らない世代は、そもそも、そうした動機づけ自体が無い。「『理想郷』って何?」「『みんな』って、誰?」といった感じでしょう。

価格競争と店舗過剰が激化し、短期間で女性を使い捨てているようなデリヘルを「守るべき世界」だと考えられる人は、ほとんどいないはず。また、同じデリヘル店に在籍していても、一度も会ったことの無い、顔を見たことも無い同僚を「守るべき仲間」だと考えられる人も、ほとんどいないはず。

つまり、今のままだと、店舗型の世代が卒業するか、活動をやめるかした時点で、「セックスワークの問題系について発言・活動する当事者」が、ごっそりと、軒並み消えてしまうのでは。

そうなれば、当事者不在の、非当事者の・非当事者による・非当事者のための代弁合戦がさらにヒートアップして、救い難い末法の世まで一直線、かと。


・・・とまぁ、非常に暗い話ですが、身もフタも無い結論を言ってしまえば、「セックスワーク1.0(売春)の世界、及び2.0(性風俗)の世界では、誰が、何を、どのように言っても&やっても、徒労に終わるだけ」「そもそも、若手や後進が育たないので、同じような議論が、時代を超えて、定期的かつ半永久的に、延々と繰り返されるだけ」ということだけは、歴史の教訓として、確実に言えると思います。

ゆえに、「セックスワーク3.0の世界(新しい性の公共)を作ろうぜ!」というのが、昨年から開催しているセックスワーク・サミットのテーマです。

ひとまず、今回のような特集が今後掲載される場合、少なくとも5年以内には、「上野千鶴子枠」あるいは「小谷野敦枠」を、「サミット枠」に置換できるよう、頑張ります(笑)。


*****************************************
「性の専門職」育成プログラム:「ホワイトハンズ・プログラム」         

コメント
君ねえ、適当なこと言わないように。恨みがあるというなら、当時松沢一派だった澁谷知美から内容証明もらったほうがよほど恨みだよ。
  • 小谷野敦
  • 2013/05/31 10:43 AM
おおおっ、小谷野さんご本人ですか!拙文をお読み頂き、大変恐縮です!

ブログ中では批判的なニュアンスで書いてしまい申し訳なかったのですが、特集の寄稿、大変面白く拝読させて頂きました。

昨年の私の新書も、お読み頂きありがとうございました。奥様にも、宜しくお伝えください。
  • ホワイトハンズ代表・坂爪です
  • 2013/05/31 10:54 AM
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